ちいさな映画館


映画『JOKER』(2019) の舞台となったゴッサム・シティの象徴的な階段シーンを、Unreal Engine上の3Dジオラマとして再構築したファンアート作品。 「狂気が生まれる場所」としての都市の空気感を、徹底的な汚れ表現とプロップ配置によって表現し、スクリーンの中の虚構を、触れられそうな実在感を持つデジタル空間へと翻訳しました。
本作品では、映画の持つ重苦しくも美しい退廃的なトーンを再現するため、自動生成やアセットの配置ツールに頼りすぎず、あえて「人の手による配置(Hand-placed)」にこだわって制作を行いました。以下の3つの視点で、ゴッサムのリアリティを追求しています。
1. The Texture of Decay (都市の汚れと経年変化)
ゴッサム・シティ特有の「清掃されずに放置された都市」の質感を出すため、階段や壁面の汚れをレイヤー構造で構築しました。 コンクリートの染み、苔、雨だれ、落書きの跡などを、デカールやバーテックスペイントを用いて丹念に重ねることで、単なる汚しではなく「時間の経過と社会の荒廃」を物語るテクスチャとして昇華させています。
2. Micro-Narrative Set Dressing (ゴミ一つに宿る物語)
階段に散乱するゴミや瓦礫は、スキャッター(散布)ツールによるランダム配置ではなく、一つ一つ手作業で配置を行いました。 「風がどう吹き溜まるか」「人々がどこで吸い殻を捨てるか」という物理現象と人間心理をシミュレーションしながら配置することで、カオスの中にも自然な説得力を持たせ、画面の隅々まで意図を行き届かせています。
3. Atmospheric Color Grading (映画的色彩の再現)
映画『JOKER』を象徴する、不穏な緑とナトリウムランプのオレンジが混じり合う独特なカラーグレーディングを、Unreal EngineのPost Process Volumeで再現しました。 湿度を感じさせるフォグ(Volumetric Fog)とライティングの調整により、画面全体にまとわりつくような重たい空気感を表現。映画のワンフレームを切り取ったような、シネマティックな絵作りを徹底しました。

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